「システムインテグレーション崩壊 ~これからSIerはどう生き残ればいいか?」を読みました。
情報サービス企業に勤めている者としては、本書の内容は気になっていたので、読んでみました。
さすがに私も当該業界で働いているので、本書に書かれている内容に新しさは何も感じませんし、どちらかと言えば本書はユーザ企業がSI企業に向けて値引きを迫る方便が書かれているように邪推してしまいたくなる内容です。
SI企業にも色々な会社がありますが、多くのSI企業(自社サービス、パッケージを持たない企業)はシステム開発にかかる開発工数の積み上げが販売価格とリンクします。
現在は、クラウドサービスに始まるように出来合いのサービスを利用するユーザ企業も増えてきておりますので、積み上げ工数方式が馴染みづらくなってきているのだと思います。
というのも、そもそも多くのユーザ企業はSI企業の提示する工数を正しく評価できません。
自分たちで作れないため、外部のSI企業にシステム開発を委託します。
自分たちで作れないものがどれぐらいで作れると言われても評価できるわけがありません。そのため、複数のSI企業に見積もりを依頼し、価格、提案内容を比較するのです。
また、当該システム開発による成果物であるシステムを利用した際にもたらされる効果から評価するという方法もありますが、ユーザ企業はこれも限られた企業しかできません。
なぜなら、システムを導入したからといって、必ずしも想定していた効果が得られる訳ではないのです。
これはシステムの品質も原因として挙げられますが、それだけが原因ではありません。
ここからは私の私見になりますが、システムの導入効果が適切に得られないのはユーザ企業が真剣にシステム導入を考えていないケースが多いからだと考えております。
ユーザ企業はシステム開発を外部委託することで、システム導入(効果)の責任をSI企業に押し付けているように思います。
全てのユーザ企業がそうだとは言いません。
システム導入を成功させるには、実際に利用するユーザがどこまで要件を正確にSI企業に伝えて、SI企業はどれだけユーザの要件をシステムに取り込めるかがポイントとなります。
お互いの信頼関係がなくして、システム導入が成功することはあり得ないのです。
日本は出来合いのシステム(サービス)をそのまま利用するということが少ないとよく言われますが、出来合いのシステム(サービス)もそれに合わせて使うことで相応の効果は得られます。
オーダーメイドのシステムであれ、既製品のシステムであれユーザがどこまで真剣にシステム導入を考えて信頼できるSI企業やシステム部門と接するかが重要なのです。
それをシステムは門外漢だからという理由で、当該システムを導入して達成したい目的を全ての関係者間で共有せずに、ユーザ企業がシステム導入を進めるのであれば成功することはありません。
本書によりシステム導入の様々な考え方は抑えることはできると思いますが、本質的に重要なことはSI企業、ひいては業界全体としてユーザ企業をどこまでシステム開発に向き合わせるかということが最大の課題だと私は感じています。
SI企業がシステム導入の失敗で、ユーザ企業と裁判になり負けるニュースの方が全体的には多いと感じております。
これらのケースにおいて、本当にSI企業側の責任だったのかというのを私には判断できるだけの情報はありません。ユーザ企業はシステムの素人だからSI企業側がそれを踏まえて対応しなければならないという判決結果が多い状況において、本当にユーザ企業に責任はないのかと考えさせられます。
当然、システム能力が低いユーザだとSI企業が気づいており、システム開発を受託しているのでしょうから、SI企業側に責任がないとは言えません。
ただ、そもそもシステム開発が失敗する原因は双方にあり、互いの協力なくして成功はないということを全てのユーザ企業、SI企業が理解して仕事をすればSIビジネスは形を変えて存続していくと確信しております。
つまりSIの崩壊はないのです。ただ、前提としてSI企業にはユーザ企業に信頼される確かな技術が必要だと思います。技術にはIT技術は当然のこと、ユーザ企業を巻き込む技術も求められるでしょう。
私も営業としてユーザ企業の信頼が得られるような良い仕事を心掛けたいです。
システムインテグレーション崩壊 ?これからSIerはどう生き残ればいいか?
- 作者: 斎藤昌義
- 出版社/メーカー: 技術評論社
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